カテゴリー: 語録

  • 休む罪悪感

    休む罪悪感|休むたびに謝る経営者は、回復を借金のように扱っている

    ビジネスで言うと

    休む罪悪感とは、休むこと自体に罪の意識を感じてしまうことを指す言葉である。経営の場面では、休日なのに部下への申し訳なさが消えない、有給を取る社員に内心モヤつく、休んでいる間もメールを確認し続ける、といった形で現れる。経営者が休むことを悪いこととして扱う会社では、部下も休みにくくなる。報告は休み明けに集中し、疲れた顔のまま判断が下され、ミスと離職が増えていく。休む罪悪感は謙虚さではない。回復を後回しにする経営習慣そのものだ。休めない経営者の下では、休む人間が悪者になり、無理をしている人間だけが評価される空気が育つ。その空気は短期的には勤勉に見えて、長期的には疲弊した人間から辞めていく会社の土壌になる。

    原因

    背景には、「経営者は休んではいけない」「休むのは怠けだ」という価値観があるとされる。創業期の無理が成功体験になっている経営者ほど、休まなかった自分を誇り、休む自分を許しにくい場合がある。心理面では、自分が止まると会社が止まるという責任感と、休んでいる間に置いていかれる不安が重なり、休む決断そのものがストレスになる。また、部下が働いている姿が見える環境では、比較の意識が罪悪感を強める。休む技術の問題である前に、休むことへの意味づけの問題として現れることが多い。

    対策

    罪悪感を消そうとするより、休みを仕事の一部として設計し直す方が早い。

    • 休む理由を「回復」ではなく「判断の質を守る経営行動」と言語化する
    • 休日の連絡ルールを先に決め、緊急の定義と窓口を部下に共有する
    • 休む前に引き継ぎメモを残し、不安の材料を目に見える形で減らす
    • 休んだ翌日の成果で評価する:判断の速さ、言葉の荒さ、ミスの少なさを見る
    • 部下の休みにも同じ基準を適用し、休む人を責める空気を残さない

    罪悪感が湧いたら、感情ではなく予定で上書きする。休みも会議と同じく、入れた以上は守るものとして扱う。休んだ自分を責める声が出たら、休まなかった時期のミスと疲労を思い出す材料に変える。感情の材料も、使いようで経営の判断材料になる。

    休むことに謝る経営者の会社で、部下が堂々と休めるはずがない。

    今日一日では、経営者と働く人のこころのテーマを、仕組みと心理で読み解いています。個別の相談は soudan@kyou-ichinichi.com まで。毎日の読みものはメールマガジンでお届けしています(登録は今日一日のサイトから)。

  • 諦め

    諦め|諦める力がない経営者は、撤退が遅れて会社を削る

    ビジネスで言うと

    諦めの語源は「明らめる」、物事の道理を明らかに見ることだと言われます。ビジネスで言うと、諦めとは敗北ではなく、続ける根拠とやめる根拠を明らかにする判断です。新規事業、赤字の取引先、合わない採用、効果の薄い広告。経営者に必要なのは根性ではなく、撤退条件を先に決める冷静さです。諦めが遅れるほど、資金も時間も人の気力も削られていきます。

    原因

    やめられない背景には、これまでかけた費用や時間を惜しむ心理、いわゆるサンクコストへの囚われがあります。「ここまでやったのだから」という言葉が出たら要注意です。さらに経営者は孤独で、やめる判断を相談できる相手が少なく、自分の決断を自分で否定することへの抵抗も強くなります。周囲への見栄や、失敗を認めたくない気持ちも、撤退を遅らせる要因です。諦めの遅れは意志の弱さではなく、判断の仕組みがないことの表れです。

    対策

    感情でやめるのではなく、数字でやめる仕組みを先に作ります。

    撤退判断表(事業・取引ごとに1枚)
    – 継続条件:売上、粗利、工数のうち最低ラインを数値で書く
    – 判定日:毎月何日に見直すかを固定する
    – 撤退条件:ラインを何回下回ったら終了するかを先に決める
    – 次の使い道:空いた人と資金を何に回すかを書く

    諦める対象は事業だけではありません。合わない働き方、無理のある取引条件、成果につながらない付き合いも同じです。一つ終わらせるごとに、経営者の時間と集中力が戻ってきます。逆に全てを抱えたままでは、新しい挑戦に使う余力が生まれません。諦めは守りの判断に見えて、実は攻めの資源を作る判断です。

    チェック手順はシンプルです。
    1. 判定日に表だけを見る(思い出話は禁止)
    2. 条件に当てはまれば、理由を1行残して終了する
    3. 終わらせた資源の行き先をその場で決める

    やめることを先に決めておく経営は、現場にも無駄な我慢を強いることが少なくなる。

    始める判断より、やめる判断の方が経営者の値打ちを決める。

    今日一日では、経営者と働く人のこころのテーマを、仕組みと心理で読み解いています。個別の相談は soudan@kyou-ichinichi.com へどうぞ。毎日の読みものはメールマガジンでお届けしています(登録は今日一日のサイトから)。

  • インナークリティック

    インナークリティック|頭の中の「お前はダメだ」という声は、事実ではない

    ビジネスで言うと

    インナークリティックとは、頭の中で自分を責め続ける内なる批判の声を指す言葉である。「あの商談、詰めが甘かった」「部下の失敗は自分の指導のせいだ」「この程度で経営者を名乗るな」。失敗のたびに、あるいは何もない夜にさえ、その声は容赦なく響く。

    この声は、向上心の裏返しに見える。しかし実際には、反省とは性質が違う。反省は「次に何を変えるか」で終わるが、インナークリティックは「自分はダメだ」という人格の否定で終わる。前者は行動を生むが、後者は消耗だけを生む。経営者の判断の質は、この声との付き合い方で大きく変わる。

    原因

    この声の多くは、過去の環境で身についたものである。厳しい上司の言葉、失敗を許さない空気、成果でしか評価されなかった経験。そうした外側の基準が、いつの間にか内側の声として再生され続けるようになる。

    経営者という役割は、この声を強めやすい。最終責任は全て自分、比べる相手は成功した同業他社、休む間もなく次の課題が来る。真面目で責任感の強い人ほど、声のボリュームは上がる。つまりこの声の大きさは、その人の欠陥ではなく、背負ってきた責任の重さの裏返しでもある。

    対策

    声を消そうとするより、声と事実を分ける訓練をする。

    • 批判の声が響いたら、その内容を紙に書き出す。頭の中の声は絶対的に聞こえるが、文字にすると「一つの意見」に格下げできる
    • 書いた内容を「事実」と「解釈」に分ける。数字や出来事は事実、「ダメだ」は解釈である
    • 部下や信頼する相手に同じ相談をされたら何と言うか、を自分にも適用する。他人には渡せる公平さを、自分にも渡す
    • 反省は「次に変える行動を一つ決める」までで打ち切る。それ以上は反省ではなく自責である
    • 声が強く、眠れない、気分の落ち込みが続くといった状態が重なる場合は、一人で処理しようとしない(医師へ相談して)

    自分を責める声の大きさは、実力の証明ではない。経営者の仕事は、自分を裁くことではなく、次の一手を決めることだ。


    今日一日では、経営者と働く人のこころのテーマを、仕組みと心理で読み解いています。個別の相談は soudan@kyou-ichinichi.com まで。毎日の読みものはメールマガジンでお届けしています(登録は今日一日のサイトから)。

  • エモーショナルイーティング

    エモーショナルイーティング|空腹ではないのに食べてしまう夜は、心が先に空腹なのだ

    ビジネスで言うと

    エモーショナルイーティングとは、空腹ではなく感情をきっかけに食べてしまうことを指す言葉である。ストレスの強い日の夜食、商談がうまくいった後の暴食、イライラを鎮めるための間食。経営者の一日は感情の起伏が大きく、その起伏のたびに「食べる」が発動すると、体重、睡眠、翌朝の調子にまで影響が及ぶ。

    これは食欲の強さや自制心の問題ではない。食べる行為が、感情を処理するための最速の手段として組み込まれてしまった状態である。仕事の成果に直結しない分、軽く見られがちだが、体調は経営の基盤である。夜の食べ過ぎが眠りを浅くし、翌日の判断を鈍らせる。その連鎖は、立派な経営課題として扱うべきものだ。

    原因

    引き金は、処理しきれない感情の在庫である。不安、怒り、孤独、達成感の反動。感情は消すことができず、何らかの形で処理を求める。食べることは、手早く、確実に気分を変えられる手段のため、他の処理方法(休む、話す、書く)よりも優先されやすい。特に経営者は、弱音を吐く場や、ゆっくり食事を楽しむ時間を持ちにくく、「ついで食い」「締めの食い」に寄りやすい。

    もう一つの要因は、生活のリズムである。夕食が遅い、会食が多い、昼食を抜く。その乱れが夜の空腹感を増幅させ、感情の引き金と重なったときに強い食欲として現れる。食行動や体重のことで強い苦痛や支障が続く場合は、背景の確認も含めて相談を検討してほしい(医師へ相談して)。

    対策

    食べるな、ではなく、感情と食事の回路を分ける。

    • 「食べたい」と感じたら、まず本当の空腹かを確認する。直前の食事から何時間か、胃の感覚はどうか。10分だけ置く習慣を作る
    • 夜の予定に「食以外の締め」を用意する。風呂、散歩、明日の準備。本音では「一区切り」が欲しいだけの夜も多い
    • 感情の記録を短くつける。食べ過ぎた日に、何があったか。引き金の型が見えると、対処は立てやすくなる
    • 会食の翌日は調整日ではなく休息日にする。罪悪感の断食は、次の暴食の引き金になりやすい
    • 食行動が自分で制御しにくい感覚が続く場合は、意志の問題にせず、専門の窓口を頼る(医師へ相談して)

    夜の冷蔵庫を開ける手は、腹ではなく心に引っ張られている。感情の処理方法を増やすことが、経営者の体調管理の本丸だ。


    今日一日では、経営者と働く人のこころのテーマを、仕組みと心理で読み解いています。個別の相談は soudan@kyou-ichinichi.com まで。毎日の読みものはメールマガジンでお届けしています(登録は今日一日のサイトから)。

  • 強迫性障害

    強迫性障害|頭から離れない考えと確認の繰り返しが、経営の時間を奪うとき

    ビジネスで言うと

    強迫性障害は、頭から離れない考えと、繰り返しの行為に苦しむ病気を指す言葉である。鍵を閉めたか何度も確認する、書類の数字が気になって作業が進まない、手を洗う行為が止められない。経営の場面では、送金を何度も見直す、契約書の確認が終わらない、メールを送る前に何十回も読み返す、といった形で現れることがある。

    大事なのは、これを「几帳面」「慎重」と混同しないことだ。慎重さは本人が選べるが、強迫の繰り返しは本人にも止められない。時間が奪われ、苦痛が伴い、日常生活に支障が出る。そこまでの状態は、性格の話ではなく、相談と治療の対象になる話である(医師へ相談して)。

    原因

    原因は完全には解明されていないが、脳の働きに関わる要因が関係するとされ、本人の意志の弱さや性格の問題ではない。強いストレスや生活の変化をきっかけに表面化することもある。不安を打ち消すための確認や儀式的な行為が一時的に安心を生むため、「不安→確認→一時的な安堵」の回路が強化され、繰り返しが固定されていく仕組みが指摘されている。

    経営者にとっては、責任の大きさが症状と結びつきやすい。金額の大きい送金、契約、個人情報。間違えれば会社に実害が出る領域だからこそ、「確認しなければ」という思考が膨らみやすい。本人は「経営者として当然の慎重さだ」と解釈してしまうため、受診や相談が遅れることも少なくない。

    対策

    この状態への対処は、根性論の正反対、つまり「専門家につながること」が中心になる。

    • 確認や繰り返しの行為に、一日の中で多くの時間が奪われているなら、それ自体を相談の材料にする(医師へ相談して)
    • 「もっと注意すれば治る」という方向に努力を向けない。注意の強化は、回路の強化につながりかねない
    • 業務側では、確認工程を「人の目」から「仕組み」へ移す。二重チェックの担当を分ける、限度回数を決めるなど、確認が無限に続かない設計にする
    • 家族や社員が行為を手伝う形(何度も確認に付き合う等)は、かえって固定化させる場合がある。対応に迷えば、専門家の助言を得る(医師へ相談して)
    • 相談先は、医療機関や公的な相談窓口が入口になる。状態を言葉にして伝えることから始める

    確認の繰り返しは、慎重さの勲章ではない。時間が奪われ、苦痛があるなら、それは相談してよい病気のサインだ。抱え込むな。


    今日一日では、経営者と働く人のこころのテーマを、仕組みと心理で読み解いています。個別の相談は soudan@kyou-ichinichi.com まで。毎日の読みものはメールマガジンでお届けしています(登録は今日一日のサイトから)。

  • トラウマ

    トラウマ|過去の衝撃に経営判断を乗っ取らせるな

    ビジネスで言うと

    トラウマとは、強い衝撃体験が心に残り、後々まで影響することを指す言葉だ。経営で言うと、大きな倒産危機、裏切り、事故、ハラスメント、災害といった出来事の記憶が、似た場面に触れた途端によみがえり、現在の判断を過去の恐怖で染めてしまう状態である。融資の話になると過度に身構える、特定の人物や場所を避ける、些細なミスにも体が強く反応する。過去の教訓と、過去に縛られることは違う。その線引きが曖昧になると、守りの判断が事業の機会まで閉ざしてしまう。

    原因

    衝撃的な体験は、記憶として整理される前に、強い感情や体の反応と結びついて残る場合があるとされる。そのため、似た音、言葉、状況に触れただけで、当時の緊迫感が現在に重なって感じられることがある。経営者は「もう終わった話だ」と頭で処理しがちだが、心身の反応は理屈だけで消えるとは限らない。避けることで一時的に楽になっても、避ける範囲が広がると、営業、人事、資金調達といった本来必要な行動まで狭まる場合がある。つらい反応が続き、生活や仕事に影響が出ていると感じるときは、抱え込まないことが大切だ(医師へ相談して)。

    対策

    まず、反応が起きる場面を「弱点」ではなく「引き金」として記録する。何がきっかけで、体と気持ちがどう動き、判断がどう傾いたかを分けて書く。

    • 引き金になる場面を事前に想定し、会議や交渉の進め方を決めておく
    • 強い反応が出た直後に、重い決断をその場で下さない
    • 信頼できる相手に、出来事ではなく「今起きている困りごと」から話す
    • 避け続けて仕事の範囲が狭まっている場合は、支えを受けながら少しずつ扱う

    無理に思い出して乗り越えようとする必要はない。扱い方が分からない反応は、専門の相談先で安全に整理するほうが現実的である(医師へ相談して)。部下や家族に同じ反応が見えるときも、出来事の詳細を聞き出そうとしない。今困っている場面だけを聞き、業務の進め方や負担の配分を一緒に変える。その距離感が、信頼を壊さず支える形になる。反応を知ることは、弱点を暴くことではなく、仕事の進め方を現実に合わせる材料を得ることだ。

    過去の衝撃を教訓に変える経営者は強くなるが、過去の恐怖に舵を渡したままでは、現在の一手はいつまでも打てない。

    今日一日では、経営者と働く人のこころのテーマを、仕組みと心理で読み解いています。個別の相談は soudan@kyou-ichinichi.com まで。毎日の読みものはメールマガジンでお届けしています(登録は今日一日のサイトから)。

  • 予期不安

    予期不安|まだ何も起きていないのに負ける経営者は、本番より前に体力を使い切っている

    ビジネスで言うと

    予期不安とは、まだ起きていない出来事への不安が先行することを指す言葉である。経営の場面では、来週のプレゼン、来月の支払い、まだ来ていないクレームへの心配が、数日前から頭の中を占拠する形で現れる。準備は進むどころか眠れなくなり、当日は疲れた状態で本番を迎える。実際に起きた問題より、起きるかもしれない問題の方が長く苦しめるのが予期不安の特徴だ。不安を先取りしても、リスクは減らない。減るのは本番で使えるはずの集中力と体力だけである。部下への指示も悲観に寄り、まだ起きてもいない失敗への謝罪や言い訳から話が始まるようになる。

    原因

    仕組みは、脳が未来の脅威を現実のように先行処理することにあるとされる。曖昧な予定ほど想像の余地が大きく、最悪の結末まで自動で補完されやすい。過去に似た場面で失敗した経験があると、その記憶が呼び水になり、「また同じことになる」という予測が強まる場合がある。心理面では、完璧に備えなければ安心できないという構えも要因になる。全ての可能性を潰そうとすると確認作業が際限なく増え、不安は減るどころか「まだ備えが足りない」という感覚を残し続ける。情報の少なさと時間の長さが、不安を育てる餌になる。

    対策

    対策は、不安を消すことではなく、不安が暴れる範囲に柵を作ることだ。

    柵の作り方 具体策
    時刻を決める 心配する時間は1日15分までと決め、それ以外はメモに移して閉じる
    分けて書く 起きた事実、起きる可能性、今日できる準備を3列に分ける
    準備に上限 チェック項目を先に決め、終わったら追加の確認をしない
    体を先に整える 本番前日は睡眠を優先し、夜の想像の時間を物理的に短くする

    強い不安が繰り返し現れ、仕事や生活を圧迫する状態が続く場合は、工夫だけで抱え込まず、専門の窓口に相談することも選択肢になる。本番への備えは必要だが、備えの名を借りた想像の反芻は備えではない。その線引きが、経営者の体力を守る。

    予期不安に負けるのではない、先に戦いすぎて本番に残っていないだけだ。

    今日一日では、経営者と働く人のこころのテーマを、仕組みと心理で読み解いています。個別の相談は soudan@kyou-ichinichi.com まで。毎日の読みものはメールマガジンでお届けしています(登録は今日一日のサイトから)。

  • 愛着

    愛着|会社への愛着が強いほど、手放す判断は仕組みで守れ

    ビジネスで言うと

    愛着とは、特定の相手との結びつきの中で安心感を得る心理の働きを指す言葉です。ビジネスで言うと、会社、商品、社員、取引先への「情」が判断にどう影響するかというテーマになります。創業した事業、苦楽を共にした社員、長年の取引先。愛着は経営の原動力になる一方で、赤字部門を切れない、問題行動を見逃す、後継や売却の話を進められないといった形で、冷静さを曇らせることもあります。

    原因

    人は時間と労力をかけた対象ほど価値を高く感じる傾向があります。経営者にとって会社は仕事であると同時に、人生そのものに近い存在です。そのため事業への指摘が、自分自身への否定のように響くことがあります。また安心できる関係が社内に少ない経営者ほど、特定の社員や取引先への依存が強まりやすくなります。愛着と依存の境目は曖昧で、疲労や孤独が強い時期ほど、その境目はさらに見えにくくなります。心身の不調が絡むと感じるときは、早めに専門家へもつないでください(医師へ相談して)。

    対策

    愛着を消す必要はありません。愛着があっても判断できる仕組みを用意します。

    対象 愛着で止まる判断 仕組みで進める工夫
    事業 赤字でも続けたい 撤退ラインを数値で先に決める
    社員 注意できない 評価基準と面談記録で伝える
    取引先 値上げ交渉ができない 相場資料をもとに事務的に進める

    健全な愛着は、組織の土台にもなります。経営者が人や事業を大切にする姿勢は、社員の安心感や取引先との長期的な信頼につながります。問題は愛着の有無ではなく、愛着によって事実が見えなくなる瞬間です。売上、粗利、離職、顧客の声といった事実を定期的に眺める場を持てば、情と経営は両立できます。

    今日からの実践は2つです。
    1. 大事な対象ほど、判断基準を「好き嫌い」でなく紙に書く
    2. 自分が感情的になる案件は、第三者の目を1人入れる

    情は経営の燃料だが、ハンドルまで情に握らせてはいけない。

    今日一日では、経営者と働く人のこころのテーマを、仕組みと心理で静かに読み解いています。個別の相談は soudan@kyou-ichinichi.com まで。毎日の読みものはメールマガジンでお届けしています(登録は今日一日のサイトから)。

  • インポスター症候群

    インポスター症候群|実績があるのに「偽物だ」と感じる経営者の正体

    ビジネスで言うと

    インポスター症候群とは、実績があっても「自分は偽物だ」「運が良かっただけだ」と感じてしまう心理を指す言葉である。創業して会社を続けている、売上も社員もいる。それでも、表彰や取材の場面で「自分なんかが」と身がすくむ。いつか「本当は大したことがない」とばれるのではないか、という恐れがつきまとう。

    この感覚の厄介なところは、実力不足とは無関係に起きることだ。むしろ、真面目に努力して成果を積み上げてきた人ほど強く現れる。経営の場面では、過剰な準備で自分を追い込む、成功しても次の不安に直行する、価格を上げる決断をためらう、といった形で事業の足を引っ張る。

    原因

    背景の一つは、成功の要因の見方である。自分の成果を「努力や工夫」ではなく「運やタイミング」に帰属させる癖があると、実績が増えても自信は積み上がらない。失敗は自分の実力、成功は偶然。この非対称な解釈が、偽物感を保ち続ける。

    もう一つは、比較の相手の選び方である。同業の成功者、メディアで見る華やかな経営者。彼らの「表側」と自分の「内側」を比べれば、誰でも見劣りする。加えて、経営者は未熟さを口にできる場が少ない。弱さを見せない役割が、感覚を一人で抱え込ませ、固定化させていく。

    対策

    自信は感情で作るのではなく、記録で支える。

    • 実績の棚卸しを文字で行う。創業からの年数、乗り越えた危機、継続している取引先、雇っている人数。数字と事実は、感覚に反論する材料になる
    • 成功の要因を「運」と一括りにせず、自分の判断や行動が効いた部分を最低一つ書き出す
    • 価格や待遇の交渉では、感覚ではなく実績表を根拠に決める。偽物感で値段を下げない
    • 同じ立場の経営者と話す場を持つ。多くの経営者が同じ感覚を抱えていると知るだけで、重さは変わる
    • 不安が強く、仕事や睡眠に支障が出ている場合は、抱え込まず相談する(医師へ相談して)

    「偽物だ」という感覚は、実績のなさの証拠ではない。責任を背負い続けてきた人間が、ときどき払う心の税金のようなものだ。払い終えたら、また前を向けばいい。


    今日一日では、経営者と働く人のこころのテーマを、仕組みと心理で読み解いています。個別の相談は soudan@kyou-ichinichi.com まで。毎日の読みものはメールマガジンでお届けしています(登録は今日一日のサイトから)。

  • 落ち込み

    落ち込み|気分が沈む日は誰にでもある。大事なのは、沈んだ日の判断ルールだ

    ビジネスで言うと

    落ち込みとは、気分が沈み、意欲や自信が下がる状態を指す言葉である。大きな商談を落とした、部下に辞められた、数字が目標に届かなかった。経営の現場には落ち込む理由がいくらでもある。落ち込み自体は、異常でも弱さでもない。真剣に経営していれば、真剣な分だけ沈む日が来る。

    経営上の問題は、落ち込むことではなく、落ち込んだ状態で下す判断である。沈んだ日の経営者は、事業の見通しを実際より暗く見積もり、人への評価を厳しくし、将来の投資を止めがちになる。気分は判断の色眼鏡だ。だから、落ち込みは「気持ちの話」で終わらせず、判断の管理の問題として扱う。

    原因

    直接のきっかけは失敗や喪失だが、落ち込みの深さを決めるのは、たいてい別の要因である。睡眠不足、連続した難局、相談相手の不在。本人の回復力が削られた状態で失敗が重なると、一個の出来事が全体の否定に広がっていく。「あの商談を落とした」から「自分の経営は間違っている」へ。この飛躍が、落ち込みを深くする。

    もう一つは、比較である。同業の好調なニュース、SNSで見る成功した経営者。落ち込んだ日ほど、他人の表側と自分の内側を比べてしまう。比較は情報収集の顔をして、気分だけを削っていく。落ち込みが強く、長く続き、日常に支障が出る場合は、単なる気分として扱わないほうがいい(医師へ相談して)。

    対策

    落ち込まない方法はない。だから、沈んだ日のルールを先に決めておく。

    • 落ち込んだ日は、大きな決断をしない。契約、人事、投資の決定は、最低一晩置く
    • 気分の底で自分や部下の評価を文章にしない。評価は数字の揃った日に行う
    • 沈んだ日ほど、小さな完了を作る。机の整理、積んでいた事務処理。動くことでしか、気分の底は確認できない
    • 理由を一つに絞って書く。「全てがダメ」ではなく「今回はこの条件で負けた」。書けば、落胆は分析に変わる
    • 二週間以上、気分の沈みが続く、眠れない、食欲が落ちるといった状態が重なる場合は、早めに相談する(医師へ相談して)

    落ち込む経営者は、ダメな経営者ではない。沈んだ日に大きな判断をしないと決めている経営者が、強い経営者だ。


    今日一日では、経営者と働く人のこころのテーマを、仕組みと心理で読み解いています。個別の相談は soudan@kyou-ichinichi.com まで。毎日の読みものはメールマガジンでお届けしています(登録は今日一日のサイトから)。