カテゴリー: 語録

  • 発達障害

    発達障害|合わないやり方を努力で埋めるな、仕組みで戦え

    ビジネスで言うと

    発達障害は一般に、脳の働き方の特性により、生活に困難が生じる状態を指す言葉である。経営や仕事の場面では、集中の波が大きい、口頭指示が頭に残りにくい、段取りや整理が苦手、空気を読む暗黙の了解が分かりにくい、感覚の刺激に疲れやすいといった形で、特性と環境の合わなさが表面化する場合がある。能力が低い話ではない。得意と苦手の偏りが大きく、合わない方法で働くほど消耗し、合う方法では力を出しやすい点が重要だ。経営者自身にも、部下にも起こり得る前提で仕組みを考える必要がある(医師へ相談して)。

    原因

    特性の現れ方は人によって大きく異なり、一つの型で説明できるものではないとされる。注意の向け方、記憶の保ち方、感覚の受け取り方、社会的な手がかりの読み取り方など、働き方の違いが、職場の慣習や曖昧な指示とぶつかると困難が強まる場合がある。逆に、指示が具体的で、期限と優先順位が明確で、作業環境が整っていると、同じ人でも動きやすくなることがある。つまり問題は「人」か「環境」かの二択ではなく、その組み合わせにある。気になる特性や困難が続き、診断や支援の要否を知りたい場合は、自己判断で決めつけず相談が入口になる(医師へ相談して)。

    対策

    対策の軸は、根性論をやめ、合う形に仕事を組み替えることだ。

    • 指示は口頭だけでなく、文字、期限、完成形の見本で渡す
    • 仕事は細かく区切り、優先順位を一つずつ明確にする
    • 苦手な工程はチェック表、定型文、タイマーなどで外部化する
    • 会議や面談では、刺激や情報量を調整できる余地を用意する

    経営者自身に心当たりがある場合も、部下に困難が見える場合も、「努力不足」と決める前に方法を変える。それでも生活や仕事への支障が大きいときは、専門の窓口で現状を整理するほうが遠回りに見えて近道である(医師へ相談して)。仕組みを変えることは、特定の誰かへの配慮で終わらない。指示が明確な組織は、誰にとってもミスが減り、教育の時間も短くなる。合う形を探す作業は、そのまま組織の生産性を上げる作業である。曖昧さを減らす工夫は、結局は全員の働きやすさになる。

    特性を言い訳にするなという言葉は要らない、特性に合わない仕組みを放置する経営こそ、現場の力を捨てている。

    今日一日では、経営者と働く人のこころのテーマを、仕組みと心理で読み解いています。個別の相談は soudan@kyou-ichinichi.com まで。毎日の読みものはメールマガジンでお届けしています(登録は今日一日のサイトから)。

  • 双極性障害

    双極性障害|調子の波が大きい経営者ほど、波の前提で仕組みを組む必要がある

    ビジネスで言うと

    双極性障害とは一般に、気分が高揚する時期と沈む時期を繰り返す病気として説明される言葉である。ここで大切なのは、経営者本人や周囲が病名を決めつけることではない。仕事の場面では、意欲と行動量が大きく上がる時期と、連絡や判断が重くなる時期が交互に現れ、本人の計画も周囲の期待も振り回される形で問題になる場合がある。高揚している時期には大きな投資や採用に踏み切りやすく、沈む時期には必要な連絡まで止まりやすい。その波を「気分の問題」「性格の問題」で片づけず、体調と業務設計の問題として扱うことが、会社を守る第一歩になる。気になる状態が続く場合は、自己判断で抱え込まず、早めに専門機関へつながることが大切だ(医師へ相談して)。

    原因

    原因は一つに決められるものではなく、体質的な要因や脳の働き、強いストレス、睡眠リズムの乱れなどが関係する場合があるとされる。経営環境は、資金繰りや大型案件の成否で気分が大きく揺れやすく、睡眠も不規則になりやすい。調子が上がっている時期は本人も周囲も「絶好調」と評価しやすく、無理が積み重なっていることに気づきにくい。逆に沈む時期は「怠けている」と誤解されやすく、必要な支援や受診につながりにくい場合がある。波の存在そのものより、波を前提にした仕組みがないことが、業務上の事故を大きくする。

    対策

    対策は、気合で波を消すことではなく、波が来ても会社が壊れない設計にすることだ。

    場面 仕組み
    大きな投資・契約 高揚感が強い時期は即決せず、冷却期間と第三者チェックを入れる
    睡眠 就寝と起床の時刻をできるだけ固定し、乱れた日を記録する
    業務量 沈む時期でも回るよう、定型業務の手順書と代理判断者を決める
    周囲との共有 信頼できる役員や家族と、異変のサインと連絡手順を共有する

    体調の記録は有効だ。睡眠時間、気分の高低、衝動的に決めたことを簡単にメモするだけでも、波のパターンが見えやすくなる。ただし記録は自己診断の道具ではない。波の幅が大きい、生活や仕事に支障が出ている、周囲が強い異変を感じるといった場合は、記録を持って専門機関に相談する材料にする(医師へ相談して)。

    波を気合で消そうとする経営は危うい。波がある前提で会社を設計し、異変は早めに専門家へつなぐ。

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  • アルコール依存

    アルコール依存|経営者の酒が、逃げ場から主人に変わるとき

    ビジネスで言うと

    アルコール依存は一般に、飲む量や飲む機会を自分で制御しにくくなる状態を指す言葉である。経営の文脈で言えば、問題は「酒が好きかどうか」ではない。商談後の一杯、資金繰りを考えながらの晩酌、孤独や眠れなさを紛らわすための飲酒が、いつの間にか「飲まないと切り替えられない」「飲まないと眠れない」と、酒のほうが主導権を持つ形に変わっていくことだ。判断、睡眠、翌朝の集中、部下への態度にも影響が及びかねない点で、経営者にとっては個人的な嗜好の話では済まなくなる。

    原因

    経営者は飲酒の入口が多い。付き合い、接待、祝い、慰労。加えて、責任の重さからくる緊張や孤独を、一時的に緩める手段として酒が身近にある。飲むとほっとするという体験が繰り返されると、脳と行動の結びつきとして「疲れたら飲む」「考えたくないから飲む」という回路が強まりやすいとされる。

    もう一つの要因は、止めるきっかけの少なさだ。量や頻度を指摘する立場の人が周囲に少なく、予定を自分で決められる分、歯止めも自分で用意しなければいけない。眠るための飲酒が続くと、寝つきはよく感じても睡眠の質との関係が指摘されることもあり、疲れが残ってまた飲む、という回り方につながる場合がある。

    対策

    まず必要なのは、意志の強さ比べではなく、自分の飲み方を事実として見ることである。気になるサインがある場合は、抱え込まず早めに専門家へつながることも選択肢になる(医師へ相談して)。

    飲み方を見直すための記録チェック:

    • 飲んだ日と飲まなかった日を、カレンダーに印だけ付ける
    • 飲む前に「今日は何杯までか」を決め、翌日に守れたかを見る
    • 「眠るため」「考えないため」に飲んだ日は、その理由もメモする
    • 空腹で飲み始める日が多いか、深夜まで続く日が多いかを確認する
    • 減らそうとして減らせなかったことが続く場合は、その事実を相談材料にする(医師へ相談して)

    付き合いの場では、先にノンアルコール飲料を手元に置く、杯のペースを相手に合わせない、終わりの時間を先に伝えるなど、場を壊さない工夫はある。ただし、量を自分で止めにくい感覚が強いときは、工夫で乗り切ろうとし続けるより、専門の窓口に現状を話すほうが現実的だ(医師へ相談して)。

    酒は経営者の道具でなければならない。道具に使われ始めたら、勝負は酒量ではなく、相談の早さで決まる。

    今日一日では、経営者と働く人のこころのテーマを、仕組みと心理で読み解いています。飲酒との付き合い方など、個別の相談は soudan@kyou-ichinichi.com まで。毎日の読みものはメールマガジンでお届けしています(登録は今日一日のサイトから)。

  • うつうつ

    うつうつ|晴れない気分が続く日々は、心の天気ではなく経営の点検項目だ

    ビジネスで言うと

    うつうつとは、晴れない気分が長く続き、重たい心の様子が抜けない状態を指す言葉である。大きな出来事があったわけではない。なのに、朝から気持ちが沈んでいる、笑う場面でも心が動かない、将来を考えると息が詰まる。その重さが日常の底に居座り続ける。

    経営者にとって困るのは、この状態が判断の色を変えてしまうことだ。うつうつとした気分の日々には、事業の見通しは実際より暗く見え、部下の言動は実際より冷たく見える。気分はレンズである。レンズが曇れば、数字の読み方まで変わる。だからこれは「性格の問題」ではなく、経営の点検項目として扱う価値がある。

    原因

    うつうつとした状態の背景には、たいてい「出口の見えなさ」がある。借入の返済、慢性的な人手不足、出口の見えない値上げ交渉。解決の見通しが立たない課題を長く抱えていると、心は「考えても無駄だ」という学習をし、気分そのものが下がり続ける。

    体の側の要因も見逃せない。睡眠の質の低下、日照不足、運動の欠如、飲酒量の増加は、いずれも気分の底を下げる。経営者の生活は深夜の事務作業と会食に寄りやすく、気分を支える生活の土台が崩れやすい構造にある。気分の落ち込みが強く長く続く場合は、心だけでなく体の状態の確認も必要になる(医師へ相談して)。

    対策

    重たい気分を「やる気」で押し切るのではなく、土台と見通しの両方から手を入れる。

    • 抱えている課題を「解けるもの」「時間が解くもの」「今は解けないもの」に仕分ける。解けないものは、抱え方を変える対象だと認める
    • 朝の光を浴びる、歩く時間を予定に入れる。気分は生活のリズムに引っ張られる
    • 飲酒で気分を持ち上げる回路が増えていないか点検する。翌朝の重さとの交換になっていないかを見る
    • 週に一度、数字でも悩みでもない話ができる相手と話す。経営と無関係の会話が、レンズの曇りを取る
    • 気分の落ち込みが二週間以上続き、仕事や生活に支障が出るようなら、早めに相談する(医師へ相談して)

    うつうつとした日々は、経営者の器の小ささではない。見通しの立たない課題と崩れた生活が、心に請求書を送っているだけだ。支払う前に、内訳を確認しろ。


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  • 過労

    過労|働きすぎで倒れるのは社員だけではない。経営者の過労は会社の事故だ

    ビジネスで言うと

    過労とは、働きすぎによる心身の疲弊を指す言葉である。長時間労働、休日のなさ、眠れないほどの責任。それらが長期間続いた状態だ。社員の過労は労務管理の問題として扱われるが、経営者自身の過労は、なぜか「美徳」の顔をして語られることが多い。

    ここを間違えてはいけない。経営者の過労は、本人の健康問題にとどまらない。判断の質が落ち、感情の制御が利かなくなり、最終的には倒れて会社そのものを止める。会社で最も代替の利かない人間の過労は、最大級の経営リスクである。過労を勲章のように扱う文化は、社員にも「限界まで働くのが正しい」という誤った基準を示してしまう。

    原因

    経営者の過労の原因は、単なる仕事量ではない。「自分がやらなければ回らない」という構造が固定化していることだ。権限を手放せない、任せる人間がいない、休むと売上が落ちる。その全てが現実の一部だとしても、結果として一人の人間に負荷が集中し続ければ、心身は必ず悲鳴を上げる。

    もう一つは、休むことへの罪悪感である。社員が働いているのに自分が休むわけにはいかない、休んでいる間に競合は進んでいる。この感覚が強い人ほど、過労の自覚が遅れる。疲弊は静かに進み、気づいたときには「朝、体が動かない」という形で現れることもある。強い疲労感が抜けない、体調不良が続くという場合は、我慢ではなく確認が必要である(医師へ相談して)。

    対策

    対策は、気合ではなく、負荷の分散と強制的な停止である。

    過労の発生源 分散の手
    自分しかできない業務 手順を文章化し、一つずつ任せる。完全に同じでなくてよい
    休めない予定 休日を「空いたら休む」ではなく、先に予定として確定させる
    終わらない一日 業務の終了時刻を決め、以降は緊急のみ対応とする
    判断の集中 金額や範囲の基準を作り、基準内は現場の判断で完了させる

    加えて、自分の状態を数字で見ることだ。月の労働時間、休んだ日数、睡眠時間。感覚は過労を過小評価する。記録は過小評価をしない。経営者こそ、自分の労働を「経営データ」として管理するべきである。

    過労で倒れた経営者を、会社は誇れない。社長が長く走れる会社こそが、社員も長く働ける会社だ。


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  • 自責

    自責|全部を自分のせいにする経営者は、原因の半分を見落としている

    ビジネスで言うと

    自責とは、失敗や問題を必要以上に自分のせいにする傾向のことだ。経営者は最終責任者であるため、自責が強くなるのは自然な面もある。取引先の撤退、部下の退職、売上の低下。そのたびに「自分の判断が悪かった」「もっと早く動くべきだった」と抱え込む。責任感と自責は違う。責任感は次の一手を生むが、過剰な自責は視野を狭め、睡眠を削り、判断を鈍らせる。さらに、全部を自分の責任にすると、仕組みや市場の変化といった本当の原因の改善に手が届かなくなる。優しさでも誠実さでもなく、経営判断のノイズだ。

    原因

    自責が強まる背景には、結果をすべて自分の統制下にあると思い込む心理があるとされる。経営者は権限が大きい分、「やれば防げたはずだ」という後付けの思考に引っ張られやすい。過去の情報は結果を知った後では鮮明に見えるため、当時は見えなかったはずの兆しまで「見逃した」と感じてしまう。また、責任を一手に引き受ける姿勢が周囲に評価されてきた経験があると、自責が習慣化する場合もある。真面目さが強い人ほど、この回路に入りやすい。

    対策

    必要なのは反省ではなく、原因の仕分けだ。問題が起きたら、紙に三つに分けて書く。

    区分 問い
    自分の判断 当時の情報で、別の選択が現実的だったか
    仕組み 人が変わっても同じ失敗が起きる構造になっていないか
    外的要因 市場、相手先、タイミングなど、統制できない要素は何か

    この仕分けを経て初めて、直すべき一点が見える。仕分けなしの反省は、ただ自分を削る作業になる。また、反省の時間に上限を設けることも有効だ。考える時間を区切れば、自責は検討に変わる。部下の失敗まで背負い込みそうになったら、「本人の課題」と「支援すべき課題」を分ける。全部を背負う経営者の下では、部下も育たない。

    なお、自責の強さは日によっても変わる。疲れている日や睡眠が浅い日ほど、物事を自分の責任に寄せて考えやすい。だからこそ、重い問題の検討は、体調の整った時間帯に回す配慮も要る。感情が荒れている夜に結論を出すと、仕分けではなく自分への裁きで終わってしまう。冷静な時間に、紙の上で淡々と分ける。その作業の繰り返しが、自責を責任感へ戻していく。

    責任を引き受けることと、自分を責め続けることは別物だ。経営者に必要なのは後悔ではなく、仕分けの精度だ。

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  • 反芻思考

    反芻思考|同じ失敗を何度も考えるほど、経営者は賢くはならない

    ビジネスで言うと

    反芻思考とは、同じ嫌な考えを何度も繰り返し考え続けることを指す。経営で言うと、商談での一言、部下への注意の仕方、失注の理由を、夜になっても頭の中で何度も再生し続ける状態だ。振り返りと反芻は違う。振り返りは事実を整理し、次の一手を生む。反芻は同じ場面を回し続け、「なぜああ言ったのか」「どう思われたか」という答えの出ない問いを増やし、眠りと翌日の集中を削る。考える量が多い経営者が強いとは限らない。考えを終える力も経営能力である。

    原因

    反芻が強まる背景には、不安を減らしたい気持ちがあるとされる。頭の中で何度も考えれば解決に近づく気がするが、感情が高ぶっている状態では、新しい情報も視点も入りにくく、同じ結論を繰り返しやすい。完璧を求める傾向、責任感の強さ、失敗を周囲に話しにくい孤独も関係する場合がある。とくに夜間や疲れている時間帯は、昼なら小さく見える出来事が大きく膨らむ。さらに、考え続けることで「何もしていない罪悪感」から一時的に逃げられるため、癖として残りやすいとも言われる。

    対策

    反芻を止めるコツは、考えを禁止することではなく、考える場所と終わり方を決めることだ。

    手順 やること
    書き出す 場面、事実、自分の解釈を分けて10分だけ書く
    決める 直せることがあれば、次の一手と期限を一つだけ決める
    閉じる 紙を閉じ、「続きは明日の決めた時間に」と区切る
    切り替える 体を動かす、入浴するなど、頭以外の感覚を使う行動へ移る

    それでも同じ考えに戻るときは、失敗の大きさではなく、疲れと孤独の量を疑う。相談できる相手に経過を話すだけでも、頭の中の循環は外へ出ていく。反芻の長さと、反省の深さは比例しない。寝る前のスマホで仕事のやり取りを読み返す習慣も、反芻の引き金になりやすい。就寝前の1時間は経営の情報を入れない区切りにするだけでも、頭の再生は弱まる。翌朝の判断の質は、前夜の切り方で決まる部分が大きい。頭を止める技術は、休む技術であると同時に、翌日の経営の精度を守る技術でもある。

    同じ失敗を百回考えても学びは増えない、紙に落として一手を決めた者だけが、失敗を経営の資産に変える。

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  • 統合失調症

    統合失調症|職場の異変を決めつけで扱うことが、会社にも本人にも一番高くつく

    ビジネスで言うと

    統合失調症とは一般に、思考や感情のまとまりに影響が出る病気として説明される言葉である。経営や職場の文脈で重要なのは、誰かの言動を見て病名を当てにいくことではない。集中が続かない、会話の噛み合い方が変わる、不安や警戒が強く見えるなど、仕事に支障が出る変化が現れたときに、会社がどう対応するかである。本人を責める対応も、逆に何も確認せず放置する対応も、状態を悪化させるおそれがある。経営者に求められるのは診断ではなく、業務上の事実を落ち着いて確認し、必要な配慮と専門機関への接続を用意することだ。異変を感じた場合は、社内で病名を決めつけず、本人や家族、専門機関とつながる道を確保する(医師へ相談して)。

    原因

    発症の仕組みは完全には解明されておらず、脳の働きに関わる要因や体質、強いストレスなどが重なって影響する場合があるとされる。特定の性格や育ち方だけで決まるものではない。職場では、睡眠不足や長時間労働、大きな環境変化が負担となり、状態の変化が目立つきっかけになる場合がある。周囲が陥りやすい誤りは、「やる気がない」「性格が変わった」と人格の問題に読み替えることだ。その読み替えが、本人の孤立と受診の遅れを招く。原因探しを社内で完結させようとせず、事実の記録と相談先の案内に徹するほうが、結果として会社も本人も守れる。

    対策

    職場でできることは、診断ではなく対応の手順を決めておくことである。

    • 言動の変化は評価ではなく事実で記録する(日時、業務への影響、具体的な出来事)
    • 本人と話すときは詰問せず、体調と業務量の確認から入る
    • 業務の配慮は、期限・量・対人業務の調整など、具体的な範囲で決める
    • 産業医や地域の相談窓口など、社外の接続先を事前に把握しておく
    • 本人の同意なく病名の推測を社内に広めない

    急な混乱や強い不安が見られ、業務継続が難しい状態であれば、無理にその場で結論を出さず、安全の確保と専門機関への相談を優先する(医師へ相談して)。復職や配置の判断も、自己流で決めず、主治医や産業医の意見を取り入れる形が望ましいとされる。経営者の仕事は、本人の状態を言い当てることではなく、働く場の安全と接続を途切れさせないことだ。

    職場の異変に病名を貼るな。事実を確認し、専門家へつなぐ手順を持つ会社だけが、本人も組織も守れる。

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  • イライラ

    イライラ|部下への怒りは、疲れの請求書だ

    ビジネスで言うと

    イライラとは、小さな刺激にも過敏に反応し、苛立ちが表に出やすくなる状態である。ビジネスで言うと、部下の報告の遅れ、取引先の曖昧な返事、想定外のトラブルといった、普段なら受け流せることに強く反応してしまう場面で現れる。経営者にとっての問題は、感情そのものより、その後の判断と関係への影響だ。イライラした状態で出した指示は短く、強くなり、部下は次から報告をためらう。本人も後で「言い過ぎた」と消耗する。

    原因

    イライラは性格だけで説明できるものではない。一般に、睡眠不足、空腹、疲労の蓄積があると、感情を抑える余力が下がりやすいとされる。経営者で言えば、資金繰りや決断の重さで頭が休まらないまま、次々と刺激が入ってくる状態が土台にある。

    心理の面では「思った通りに進まないこと」への反応でもある。期待と現実の差が大きいほど苛立ちは強まる。特に、部下には部下の事情や情報があるにもかかわらず、自分の頭の中の正解と比べてしまうと、その差は「怠慢」に見えやすい。背景が見えないことも、イライラを増やす要因になる。なお、苛立ちが長く続く、生活に支障があるといった場合は、背景に別の要因がないか確認する意味でも(医師へ相談して)という視点を持っておきたい。

    対策

    イライラへの対策は、感情を消すことではなく、反応する前に一段置く仕組みを持つことである。

    その場で使える「判断を遅らせる表」:

    状況 やりがちな反応 一段置く代替
    報告が遅い その場で強く注意 「事実だけ先に聞く」と決めて聞く
    ミスの連絡 原因を即追及 対応を先に決め、振り返りは別時間に
    曖昧な返事 言い方がきつくなる 期限と確認方法だけを具体化する
    疲れている日 全てに短く返す 重要な返事は少し置いてから送る

    加えて、土台の点検も欠かせない。眠れているか、食事を抜いていないか、休みなしの期間が続いていないか。イライラが増えた日は「自分が短気になった日」ではなく「余力が減っている日」と捉え、決断の重い会議をずらす、返信を翌朝にするなど、負荷の置き方を変えることが現実的な対策になる。

    イライラは部下の問題として片付けるな。経営者自身の余力が尽きかけているという、最も早い警告だ。

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  • ウェルビーイング

    ウェルビーイング|社長の調子が、会社の数字より先に会社の未来を決める

    ビジネスで言うと

    ウェルビーイングとは、心身と社会的に満たされた、良好な状態を指す言葉である。福利厚生の話として語られることが多いが、経営の文脈ではもっと手前の話である。経営者自身の調子が、会社の判断の質、組織の空気、取引先との関係の全てに直結するからだ。

    調子の良い経営者の会社は、空気が明るく、判断が速く、人の定着もよい。逆に、経営者が疲弊した会社では、数字に出るより先に現場の活気が失われていく。ウェルビーイングは「余裕のある会社の贅沢」ではなく、業績の土台である。社員の健康経営を語る前に、まず社長自身の状態が問われる。

    原因

    経営者のウェルビーイングが崩れる原因は、仕事の「量」だけではない。むしろ大きいのは、仕事と自分自身の境界のなさである。休日も頭は資金繰りのこと、夜中もメールの通知、家族との時間でも次の会議のことを考えている。体は休んでいても、心のスイッチが切れない状態が続けば、回復は起きない。

    もう一つは、役割への没入である。「経営者である自分」以外の自分の居場所がなくなるほど、会社の不調がそのまま自己否定になる。人間関係の広さ、体を動かす習慣、仕事と無関係の楽しみ。そうした「会社以外の柱」が細るほど、全体の安定は一本足になっていく。

    対策

    ウェルビーイングは気分ではなく、設計で作る。

    • 睡眠、運動、食事の3点を「経営のインフラ」として予定表に入れる。空いた時間に捻出するものではない
    • 仕事の通知を切る時間帯を決める。夜と休日の線引きは、経営者が自分に引くしかない
    • 会社以外の柱を最低一つ持つ。趣味、地域の集まり、学びの場。会社が揺れても自分が倒れない構造を作る
    • 月に一度、自分の調子を数字で振り返る。睡眠時間、休んだ日数、イライラした回数。感覚ではなく記録で見る
    • 調子の低下が続く場合は、事業計画の前に心身の状態の確認を優先する(医師へ相談して)

    会社は経営者の器以上にはならない。器を広げる投資の筆頭は、設備でも広告でもなく、経営者自身の調子である。


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