広告だと書くと売れない?――社長がPRの二文字を隠す

消しゴムで広告は消せるか

ビル「新商品の投稿、すごく良い。だけど『PR』の文字だけ消そう」

ボブ「なぜ?」

ビル「広告だと分かったら信用されないかもしれない」

エビー「じゃあ広告ではないふりをするの?」

ビル「自然な口コミに見えるようにするんだ」

ボブ「会社から依頼しているんだろう。事実を隠す方向へ工夫するな」

ボブ

事実を隠す方向へ工夫しないで

ビル「売れる方法を考えているだけなのに」

エビー「『売れればいい』が先になると、見る人の立場が消えるわ」

ビルは元証券マンの営業感覚で、強い宣伝ほど嫌われるという不安を抱えていた。自社の商品を紹介してもらうため、外部の投稿者へ依頼内容をまとめていたが、そこには商品提供と投稿条件が書かれている。エビーはそのメモを指さした。

エビー「依頼した投稿なら、その関係をどう表示するか考える必要があるでしょう」

ビル「書くと宣伝だと分かる」

ボブ「そのための表示じゃないか」

ビル「広告っぽく見せたくないんだ」

エビー「広告であることと、面白い内容であることは両立するのよ」

投稿を見た人の立場

エビーはスマートフォンで、投稿者の文章を普通の閲覧者として読んだ。実際に使った感想のように書かれているが、依頼があったことは読み取れない。

エビー「これを見た人は、自分の意思だけで勧めていると思うかもしれない」

ビル「そう思ってほしい」

ボブ「それならまさに問題だ」

ビル「どうしてそんなに厳しい?」

ボブ「購入判断に関係する情報だからだよ。商品説明が正しくても、広告との関係が隠れていれば、見る人の受け止め方が変わる」

エビー「相手が広告だと知ったうえで読む自由を残したいわ」

消費者庁はステルスマーケティングに関するQ&Aを公開し、事業者の表示であることが判別しにくい場合などの考え方を示している。具体的にどの表示が規制の対象になるかは、投稿への事業者の関与や表示の状況などによって判断される。

ステマ規制の考え方

ビル「『広告だと見せない』を目標にするのは違ったか」

ボブ「最初から広告であることが分かる内容を作ればいい」

エビー「隠す工夫をする時間を、商品の説明に使いたいわね」

どの位置なら伝わる

ボブが投稿の画面を拡大した。投稿の末尾に小さく書いた表示は、画面によって見え方が変わる可能性がある。ビルは「目立たない方がいい」と主張したが、エビーは「見る人が気づけなければ意味がない」と返した。

ビル「二文字を目立たせるだけで売上が落ちたら?」

エビー「落ちるかどうかは分からない。でも隠す方針を正当化する理由にならない」

ボブ「しかも投稿の内容が商品の実態と違えば、表示だけ整えても十分ではない」

ビル「広告は難しいな」

エビー「説明する相手の判断を尊重するから難しいのよ」

博士が広告を見るとき

シルクワーク博士は、投稿者への依頼書と完成案を並べた。

博士「ビル君。投稿を読む人は、どんな情報を持って判断するべきだろう」

ビル「商品の特徴と、使った感想です」

博士「それに、事業者が表示の決定に関わったかという点も重要になり得る。広告であると分かるようにすることは、見る人の判断を助けるためなんだ」

シルクワーク博士

表示は、見る人の判断を助けるためです

ビル「PRと書くのが恥ずかしくて」

博士「広告を出すこと自体を恥じる必要はない。適切に示したうえで、商品やサービスの内容を正確に伝えよう。商品の利点と限界を説明することが信頼につながる」

ボブ「投稿者にも、どんな条件で依頼しているか明確にしたいですね」

博士「そうだ。事業者の関与や表示の方法は具体的な状況に即して確認し、必要なら専門家の助言も得る。投稿者だけに責任を押しつけないように」

エビー「自社の利益だけでなく、見た人が誤解しないことを目標にするのね」

博士「そう。隠して売れたとしても、後から関係を知った人の信頼を失う可能性がある。短い反応だけを成果としないことだ」

本当は自信がなかった

ビルは修正ペンを置いた。

ビル「商品に自信があると宣言してきたけど、広告として紹介したら誰も買わない気がして怖かった。だから普通の口コミに紛れ込ませたかった」

エビー「売れないことが怖いのを、広告が嫌われるからだと言い換えていたのね」

ボブ「商品への反応は、表示をごまかすより内容や価格を見直す材料にした方がいい」

博士「見た人にとって必要な情報を正確に伝え、反応が期待と違えば、商品や表現を見直そう。誠実な表示を競争上の弱点だと決めつけないことだ」

ビル「広告だと伝わる形で、面白い投稿を作り直します」

大きすぎるPR

翌日の画面には、投稿を覆うほど巨大な「PR」の文字があった。

ボブ「今度は商品の写真が見えない!」

ボブ

今度は商品が見えません

ビル「隠すのは駄目だから、最大にした」

エビー「見えることと、他の情報が読めないことは違うわ」

博士「広告だと分かり、商品の内容も判断できる表示を考えよう」

ビル「じゃあ画面の全部を『PR』にするのは……」

ボブ「やめてくれ!」

広告であることを隠すのは、読者の判断に必要な情報を奪うことにつながる。売上が怖いときほど、広告ではないふりをするのではなく、商品と依頼関係を適切に示したうえで信頼を築くことが大切だ。

信頼を残す広告の作り方

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出典

消費者庁「ステルスマーケティングに関するQ&A」

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