占い師・コンサル・コーチへの「決断の外部委託」を考える

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相談することと、決断を渡すことは、まったくの別物だ

最初に、言葉をはっきりさせます。経営者が誰かに相談すること自体は、正しい行為です。一人で全部を抱えるほうが、よほど危ない。一方で、「決断そのもの」を他人に渡してしまう「決断の外部委託」は、まったく別の話です。そしてこれは、経営者が陥る最も静かで、最も高くつく失敗の一つです。

占い師に「この事業はやるべきですか」と聞く。コンサルタントに「どちらを選ぶべきですか」と聞く。コーチに「私の答えを出してください」と求める。形は違っても、やっていることは同じです。「決める」という、経営者にしかできない仕事を、手放しているのです。

3者の仕事は「決めること」ではない

占い師、コンサルタント、コーチは、それぞれ扱うものが違います。整理しましょう。

コンサルタントが売っているのは、専門知識と分析です。市場データ、財務の見方、他社の事例。つまり「情報と論理」です。コーチが売っているのは、質問によって本人の考えを引き出す技術です。つまり「視点の整理」です。占い師が渡してくるのは、象徴や物語を通じた「意味づけ」です。気持ちを落ち着けたり、考えのきっかけを作ったりする働きはあります。

この3者に共通するのは、どれも「あなたの会社の決断」をする立場にはない、ということです。コンサルタントはあなたの会社の株を持っていません。占い師は、判断が外れても何の責任も負いません。決断の結果を引き受けるのは、経営者本人だけです。結果を引き受ける人間と、決める人間がずれたとき、組織はおかしくなっていきます。

外部委託が本当に奪うのは「学び」だ

決断を外部委託する最大の損失は、お金ではありません。「自分で決めた」という経験の蓄積が消えることです。

経営判断の精度は、決めて、結果を見て、振り返る、この繰り返しでしか上がりません。決断を他人に渡せば、この学習の輪が回りません。しかも厄介なのは、失敗したときに「あの人の助言に従ったから」という言い訳が残ることです。言い訳が残る限り、振り返りは深まりません。つまり外部委託は、今回の判断を楽にする代わりに、次回以降すべての判断を犠牲にしています。

逆に言えば、助言を受けたうえで最後は自分で決めた経営者は、結果がどうあれ、何かを持ち帰ります。「あのとき自分はこの数字を見落とした」という反省は、次の判断の精度を確実に上げます。決断とは、経営者にとって唯一の本格的な訓練なのです。

健全な相談の型は「情報は買う、視点は借りる、決断は売らない」

では、相談を健全に使う型はどういうものか。原則は一つです。情報は買ってよい。視点は借りてよい。ただし、決断だけは売らない。

実務的には、次の3つを守れば型は崩れません。

第一に、相談に行く前に、自分の仮の結論を持っていくこと。「自分はこう考えているが、見落としはないか」という形で相談する人は、助言を材料として使えます。白紙で「どうすべきですか」と聞く人は、その場で相手の結論を自分の結論にしてしまいます。

第二に、反対意見も必ず聞くこと。一人の助言者にだけ頼ると、その人の癖や利益が、そのまま自社の方針になります。占いでもコンサルでも、「別の人は逆のことを言った」という事実自体が、判断の材料になります。

第三に、決断とその理由を記録すること。「いつ、何を、なぜ決めたか」を一行でも残す。これがあるだけで、外部委託への滑り落ちは目に見えて減ります。記録は、決断の所有権を自分に取り戻す道具です。

そして、相談にはあらかじめ「期間と総額の枠」を決めておくことも効きます。たとえば、顧問契約なら期間と月額を先に区切り、その枠の中で何を相談するかを自分で決める。枠を決める行為そのものが、「助言は材料、決断は自分」という立場を保つ防波堤になります。枠のない相談は、不安の強い時期ほど際限なく広がり、気づけば助言者が経営者の席に座っている、ということになりかねません。

依存に変わるサインは、この3つだ

相談が「決断の外部委託」を通り越して「依存」に変わるときには、はっきりしたサインがあります。

一つ目は、相談しないと決められなくなることです。小さな判断まで確認を取りたくなったら、それはもう相談ではありません。二つ目は、同じ相談を複数の相手に繰り返すことです。これは情報収集ではなく、「自分の望む答えを言ってくれる人探し」です。三つ目は、支払う金額と頻度が増え続けていることです。不安が強い時期ほど高額な助言に手が伸びますが、不安は助言の量では消えません。

この3つのどれかに当てはまるなら、問題は相談相手の質ではありません。自分の中の不安と、決断から逃げたい気持ちのほうです。そこに手当てをしない限り、相談相手を変えても同じことが繰り返されます。

なお、気持ちの落ち込みや不安そのものが続いてつらい場合は、それは経営相談の領域ではありません(気になる場合は医師へ相談を)。心の不調への対処は、占いやコーチングではなく、医療につながることが先です。

要点:「決断の外部委託」の定義と原則

端的に定義します。「決断の外部委託」とは、相談すること自体ではなく、最終的な決定とその責任を、占い師・コンサルタント・コーチなど外部の助言者に移してしまうことを指します。助言者は情報や視点を提供できますが、結果を引き受けるのは経営者本人だけであり、決める人と責任を負う人がずれると、判断の学習が止まります。健全な相談の原則は「情報は買う、視点は借りる、決断は売らない」です。この一行が、この記事の結論です。

まとめ

占い師も、コンサルタントも、コーチも、それぞれ役に立つ存在です。ただし全員に共通する限界として、あなたの会社の決断はできませんし、責任も負いません。情報は買う、視点は借りる、決断は売らない。この原則を守り、相談前に、決断を記録する。そうすれば相談は力になります。逆に、決断を渡した瞬間、相談は経営者としての訓練機会を奪う装置に変わります。線は、そこにあります。

相談について

「今日一日」では、占いや相談サービスとの付き合い方、心の整理についての相談をメールでも受け付けています(soudan@kyou-ichinichi.com)。診断や治療を行う場ではありませんが、何に引っかかっているのかを一緒に整理するお手伝いはできます。もやもやが続くときは、一人で抱えずにご相談ください。

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