孤独感|人に囲まれている経営者が、なぜ一番孤独なのか
ビジネスで言うと
孤独感とは、つながりを感じられず、一人だと感じる感覚を指す言葉である。人の数とは関係がない。社員に囲まれ、取引先と会い、家族もいる。それでも「本当のことは誰にも言えない」と感じる。この「いるのに一人」が、経営者の孤独感の正体である。
経営者は、悩みの核心ほど話せない立場にある。資金繰りの不安を社員に言えば動揺を生み、家族に言えば心配をかけ、取引先には弱みになる。結果として、最も重い荷物を、最も話せないまま一人で運ぶ構造ができあがる。孤独感は判断を曇らせ、ときに酒や衝動的な決断への逃げ道にもなる。経営課題として正面から扱うべき問題である。
原因
第一の原因は、役割による情報の非対称である。経営者だけが全体の数字と将来の不安を知っている。その情報は、共有すれば周囲を不安にさせるため、抱えたままにされやすい。第二に、「経営者は強くあるべきだ」という内側の規範である。弱音を「らしくない」と封じるほど、つながりの回路は細くなる。
もう一つは、関係の質の変化だ。利害のある関係が増えるほど、純粋に「人として」付き合える相手は減っていく。会食も会議も仕事の顔で埋まった生活では、人は増えても孤独は減らない。孤独感が強く長く続くと、気分の落ち込みや意欲の低下につながることもあり、心の状態としての注意も必要になる(医師へ相談して)。
対策
孤独感の対策は、人数ではなく「本音の置き場所」の確保である。
- 経営者同士の場を持つ。同じ責任を持つ相手にだけは、数字も不安も言葉にできる。勉強会、交流会、旧知の同業者。その席の価値は、情報より先に「一人ではない」という感覚にある
- 顧問や相談役を「業務」として確保する。税理士やコンサルタントとの定例は、数字の相談であると同時に、抱え込みを防ぐ装置になる
- 家族には、全部は無理でも「今はこういう時期だ」という輪郭だけは共有する。守るための沈黙が、かえって距離を作ることがある
- 立場の要らない旧い付き合いを、一つ大切にする。経営者でない自分に戻れる関係は、孤独への直接の薬になる
- 孤独感とともに、眠れない、気分が沈む、酒が増えるといった変化が続く場合は、一人で抱える段階を超えている(医師へ相談して)
経営者の孤独は、弱さの証明ではない。責任の重さの証明である。だが、その重さを一人で運び続けることが、美徳なのではない。
今日一日では、経営者と働く人のこころのテーマを、仕組みと心理で読み解いています。個別の相談は soudan@kyou-ichinichi.com まで。毎日の読みものはメールマガジンでお届けしています(登録は今日一日のサイトから)。

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