思い込み|根拠の薄い決めつけが、経営者の選択肢を静かに削っていく
ビジネスで言うと
思い込みとは、根拠の薄い決めつけが、判断や行動を縛ることを指す言葉である。「うちの客は値上げしたら離れる」「若手はどうせ辞める」「あの会社とは組めない」。経営の現場には、検証されないまま方針になっている思い込みが幾つも転がっている。
思い込みの何が怖いか。それが「経験則」の顔をしていることだ。過去に一度あった出来事、印象に残った失敗、それらが一般法則のように扱われ、挑戦の選択肢そのものが見えなくなる。会社が成長しない理由を市場や人材のせいにしている間、その半分は経営者の頭の中の決めつけかもしれない。
原因
人の脳は、省エネのために「一つの事例から全体を決める」「自分に都合の悪い情報を避ける」「最初の印象に引きずられる」といった近道を好む。忙しい経営者はなおさらで、考える時間を節約するために、早い決めつけに飛びつきやすい。
もう一つの要因は、反証に出会わない環境である。経営者の思い込みに、部下はなかなか反論できない。「社長がそう言うなら」と組織が合わせてしまえば、思い込みは検証の機会を失い、やがて会社の「常識」として固定される。思い込みは個人の癖に見えて、実は組織のフィードバック不足が育てるものでもある。
対策
思い込みをなくすことはできない。だが、検証の回路は作れる。
- 強く信じている前提を、月に一つだけ書き出す。「本当にそうか」を問う候補として棚に上げる
- 前提に対して、反対の事例を3つ探す。探せない場合は、前提ではなく願望か恐怖である可能性が高い
- 小さく試す。値上げなら一部の商品で、採用方針なら一つの求人で。思い込みは、実験の結果にだけ負ける
- 部下に「自分の考えの穴」を指摘する役割を、公式に与える。反論が評価される場を、経営者が作る
- 数字で答えが出るものは、数字を見るまで結論を保留する。勘は大事だが、勘の検証も経営の仕事である
思い込みの強い経営者は、経験が豊かなのではない。経験の更新が止まっているだけだ。
今日一日では、経営者と働く人のこころのテーマを、仕組みと心理で読み解いています。個別の相談は soudan@kyou-ichinichi.com まで。毎日の読みものはメールマガジンでお届けしています(登録は今日一日のサイトから)。

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