共感疲労

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共感疲労|人の痛みに寄り添い続けた経営者が、ある日ぷつりと切れる理由

ビジネスで言うと

共感疲労とは、他人の苦しみに寄り添い続けて心が疲弊することを指す言葉である。もともとは医療や福祉の現場で使われてきたが、経営者にも無縁ではない。社員の家庭の事情、取引先の倒産の相談、顧客のクレームの裏にある困窮。経営者は、多くの人の「困った」を最初に受け取る席に座っている。

共感疲労の厄介さは、本人に自覚が遅いことだ。優しい人、責任感の強い人ほど、他人の問題を「自分の問題」として抱え続ける。ある日突然、人と話すのが嫌になる、相談されると苛立つ、誰の連絡にも返したくなくなる。その変化は冷たさではなく、在庫オーバーのサインである。寄り添う力は無限ではない。

原因

原因は、共感の「量」と「出口のなさ」である。相談を受けること自体は経営者の仕事だが、受けた感情を処理する場がないと、心の中に他人の苦しみが積み上がっていく。加えて、経営者は「聞く側」の固定席に座りやすく、自分の苦労を話す順番が回ってこない。

もう一つの要因は、境界の曖昧さである。社員の問題を「会社で解決すべきか」「本人の人生の問題か」。この線引きがないと、全ての困りごとが経営者の責任範囲に流れ込む。助けたい気持ちの強さが、かえって境界を消し、疲労を深める。疲労が蓄積すると、共感する力そのものが落ち、「冷たくなった自分」への自己嫌悪まで重なることがある。状態が続く場合は、一人で処理しないことだ(医師へ相談して)。

対策

共感をやめるのではなく、共感の在庫管理をする。

  • 相談を受けた後に、短い「切り離し」の時間を持つ。車での移動、散歩、着替え。人の問題を、自分の時間へ持ち込まない儀式を作る
  • 「自分が解決する問題」と「聞くことが役割の問題」を分ける。全てを背負わないことが、長く寄り添う条件である
  • 相談の窓口を分散させる。顧問、外部の相談先、経営者同士の会。受け皿が一つしかない構造を変える
  • 自分も「話す側」になる時間を作る。聞くばかりの関係は、どんな人間でも摩耗する
  • 人と会うのが極端にしんどい、眠れないといった状態が続く場合は、自分の状態の相談を後回しにしない(医師へ相談して)

寄り添い続ける力は、優しさの量では決まらない。在庫を降ろせる仕組みを持つ者だけが、長く人のそばに立てる。


今日一日では、経営者と働く人のこころのテーマを、仕組みと心理で読み解いています。個別の相談は soudan@kyou-ichinichi.com まで。毎日の読みものはメールマガジンでお届けしています(登録は今日一日のサイトから)。

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