遠慮

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遠慮|「言わなくても分かるだろう」が、経営の事故を生む

ビジネスで言うと

遠慮とは、相手への配慮から、自分の希望や意見を控えることを指す言葉です。日本的な美徳として語られますが、経営の場面では、両刃の剣になります。値上げを切り出せない、取引先に無理な条件を断れない、部下に厳しい指摘ができない。遠慮は、その場の空気を守る代わりに、会社の利益と組織の規律を静かに削っていきます。

問題は、遠慮した側の「言わなくても察してほしい」という期待が、たいてい裏切られることです。相手は察してくれません。察する義務もありません。言わなかった条件は、なかったものとして扱われ、後から「こんなはずじゃなかった」という摩擦だけが残る。遠慮の代償は、後払いで、しかも大きい。

原因

遠慮の根には、嫌われたくない気持ちと、関係を壊すことへの恐れがある。特に、創業期から付き合いのある取引先や、苦楽を共にした古参社員に対しては、「今さら強く言えない」という情が絡む。配慮の形をしているため、本人は自分の遠慮を「優しさ」として正当化しやすい。

もう一つの要因は、言葉にする技術の不足である。角を立てずに要求を伝える言い方を持っていないと、選択肢が「言うか、黙るか」だけになる。多くの経営者は、そこで黙る方を選ぶ。遠慮は性格の問題であると同時に、伝え方の選択肢の問題でもある。

対策

遠慮をやめるのではなく、配慮と要求を両立させる言い方を増やす。

  • 要望は「相手の事情への理解」+「自社の条件」の順で伝える。理解を先に置けば、条件は角が立たない
  • 金額・期限・範囲は、口約束にせず文章で残す。遠慮で言いにくいことほど、紙のほうが伝えやすい
  • 「今回は特別に」と引き受ける回数を数える。例外の常態化は、遠慮が利益を食っている証拠である
  • 部下への指摘は、人格ではなく事実と基準で伝える。基準があれば、厳しさは感情にならない
  • 切り出しにくい交渉ほど、事前に一文だけ台本を用意する。最初の5秒が決まれば、あとは進む

遠慮は優しさではない場合がある。言うべきことを言わない配慮は、相手ではなく自分を守っているだけだ。


今日一日では、経営者と働く人のこころのテーマを、仕組みと心理で読み解いています。個別の相談は soudan@kyou-ichinichi.com まで。毎日の読みものはメールマガジンでお届けしています(登録は今日一日のサイトから)。

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