イップス

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イップス|できていたことが急にできないのは、技術ではなく緊張の記憶だ

ビジネスで言うと

イップスとは、緊張によって、今までできていた動作が急にできなくなる現象を指す言葉である。もともとはスポーツの世界で使われてきたが、経営の場面にも同じ構造がある。何百回もしてきたはずの電話営業で手が止まる。慣れたプレゼンで言葉が固まる。署名や印鑑を押す手が震える。

本人にとっては「急に下手になった」ように感じるが、実際は技術が消えたのではない。一度強烈に失敗した場面の記憶が、似た場面で体を先に固まらせてしまう。頭では分かっているのに体が従わない。この乖離が、さらに焦りと自己否定を呼ぶ。

原因

引き金は、たいてい「絶対に失敗できない場面での失敗」である。大口の商談を落とした、役員の前で固まった、資金調達の面談で言葉に詰まった。その衝撃が強いほど、脳はその場面を「危険」として記録し、次に似た場面が来ると、考えるより先に体を守ろうとする。

そこへ「次こそは失敗できない」という意識が重なると悪循環になる。本来は自動でできていた動きを、一つずつ意識して制御しようとするため、かえって動きがぎこちなくなる。意識すればするほど崩れる。これがイップスの厄介さである。不安が強く、日常生活にまで広がる場合は、背景の確認も選択肢になる(医師へ相談して)。

対策

直し方は、根性ではなく手順の再設計である。

崩れる場面 再設計の例
電話営業の第一声 冒頭の型を紙に置き、最初の10秒だけ台本どおりにする
プレゼンの冒頭 結論の一文だけを覚え、そこから資料に視線を落とす流れを作る
面談での沈黙 「確認します」と言うための橋渡しの言葉を3つ用意する

小さな場面で「できた」を積み直すことも欠かせない。いきなり本番で試さず、負担の軽い相手、短い場面から成功の記録を更新していく。体は、恐怖の記憶を成功の記憶で上書きされて初めて、ほぐれていく。

イップスは才能の喪失ではない。一度の恐怖に体が過剰に忠実でいるだけだ。手順を変え、小さく勝てば、体は必ず思い出す。


今日一日では、経営者と働く人のこころのテーマを、仕組みと心理で読み解いています。個別の相談は soudan@kyou-ichinichi.com まで。毎日の読みものはメールマガジンでお届けしています(登録は今日一日のサイトから)。

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