怯え|具体的な恐れに怯える経営者は、決断の前に「何に怯えているか」を言えるか
ビジネスで言うと
怯えとは、具体的な対象や将来の出来事への恐れの感情を指す言葉である。あの取引先との面談、大口顧客の解約の可能性、監査、クレーム、資金の底。経営の現場には、怯えの対象が具体的に存在する。不安が漠然としたものであるのに対し、怯えにはたいてい「相手」や「日付」がある。
怯えそのものは、危険を察知する正常な働きである。問題は、怯えが決断を支配し始めたときだ。恐れる相手への連絡を先延ばしする、嫌な報告から目を背ける、面談の前に過剰に武装して攻撃的になる。怯えは対処のエネルギーを奪い、問題のほうを大きく育ててしまう。怯えている対象は、たいてい、直面しない期間に比例して大きくなる。
原因
怯えが強まる第一の要因は、情報の不足である。相手の出方、数字の実態、期限の正確な意味。それらが分からない部分を、想像が最悪の形で埋める。怯えの正体の半分は、実物ではなく想像の大きさだ。
第二に、過去の痛い経験である。一度強く傷ついた相手や場面は、似た状況に過敏に反応させる。さらに、経営者は弱さを見せられない分、怯えを相談できず、一人で想像を増幅させやすい。抱えた恐怖は、話さない期間が長いほど現実離れしていく。恐怖や不安が強く、眠れない、日常に支障が出るといった状態が続く場合は、一人で抱える段階を超えている(医師へ相談して)。
対策
怯えへの対処は、勇気ではなく、対象の「解像度」を上げることである。
- 怯えている対象を、一文で具体的に書く。「面談が怖い」ではなく「価格改定を切り出して、取引量を減らされるのが怖い」
- 最悪の事態と、実際に起こりうる事態を分けて書く。最悪への備えは一つ用意し、それ以外は確率の話として扱う
- 情報不足は早めに潰す。数字を確認する、日程を確定させる、相手の温度を小さく探る。怯えは情報で痩せる
- 連絡の先延ばしは「翌営業日の午前」と期限を決める。先延ばしの期間こそ、怯えの栄養になる
- 同種の場面を過去に乗り越えた経験を書き出す。自分の実績が、想像への最大の反論材料になる
怯えは敵ではない。怯えを直視しないことが敵だ。恐れの対象に名前と日付を付けた瞬間、恐怖は「課題」に格下げされる。
今日一日では、経営者と働く人のこころのテーマを、仕組みと心理で読み解いています。個別の相談は soudan@kyou-ichinichi.com まで。毎日の読みものはメールマガジンでお届けしています(登録は今日一日のサイトから)。

コメントを残す